2013年7月28日日曜日

小原の「材木岩」と「氷室」 [宮城]


手前の屋敷は「検断屋敷 旧・木村家住宅」
「検断」とは、伝馬をはじめ宿駅関係の一切の仕事を取り締まり、統括する重要な職務。かつて、ここ仙台藩・七ヶ宿は、奥羽13名の大名が往来したという大宿場町であった。


山を両断したかのような切断面

岩々が材木を立て並べたようだとして「材木岩」と呼ばれる。

以下、説明板より

天然記念物
小原の「材木岩」


国指定 昭和9年5月1日
所在地 宮城県白石市小原字清水



巨斑晶紫蘇輝石、石英安山岩質の岩漿(マグマ)が第三紀層の基盤(水平層状の水成岩)を貫いて噴出し、冷え固まるときに三角〜六角柱の節理をあらわしたものである。
材木を立て並べたような景観は自然造形の妙である。


材木岩
高さ 約65m
幅 約100m


巨岩から生えたような木が、岩下へと根を伸ばす


巨岩を抱え込む巨樹
まるで大王イカvsマッコウクジラ


かつてカイコの卵(蚕種)を貯蔵したという「氷室(ひむろ)」

以下、説明板より

材木岩「氷室」

明治時代、小原地区は養蚕・製紙の盛んな地域でした。ところが、明治時代の初めころは養蚕に欠かせない蚕種(カイコの卵)を地区内でつくることができず、福島県伊達郡から入手していました。

しかし明治13年、古山長吉氏が小原黒森で「天然の風穴(ある地点だけ一年中冷風が吹き出す自然現象)」を発見し、これを利用して蚕種貯蔵のための施設をつくり、成功しました。それが「氷室(ひむろ)」です。

氷室は三方を石組みした中に、簡素な小屋を建てた簡単な構造でした。やがて、小原地区のあちこちで風穴が発見され、明治40年頃までに多くの氷室がつくられました。材木岩氷室もその一つです。


その後、材木岩氷室は大正時代に生糸の値段が大暴落したために廃絶されたとみられます。ですが、2棟の氷室の跡が残っていました。
現在の建物は、絵馬に描かれた氷室の様子などを元にして新たに建てられたものですが、身近な自然現象をうまく利用して生活の中に取り込んだ、先人の賢い知恵を今に伝えています。

氷室は、周囲の環境をほとんど変えることなく活かしてきた「人間と自然の共生の好例」といえるでしょう。



氷室の発掘

明治時代、小原地区に蚕種(カイコの卵)の貯蔵施設が設置されていたことは以前から知られていました。しかし、これまでその施設がどのようなものだったかということについていはほとんど分かっていませんでした。そこで氷室の再建にあたって白石市教育委員会が発掘調査を行ったところ、いろいろなことがわかってきました。

まず、2棟ある氷室の大きさは、手前に設置するものが4.5m × 7.2m、高い所に設置するものが3.2m × 7.2mでした。また、氷室の石積みの高さはそれぞれ1.9mと、大人の頭上ほどの高さがあります。これを尺貫法になおすと「間口2間 × 奥行き4間」となります。
氷室は山の斜面を必要な分だけ掘り下げ、周囲に石を積んだ後、床に厚さ数センチの粘土を貼ってつくられました。そして、その石組みの内側にごく簡単なつくりの小屋を建て、蚕種の貯蔵施設としていたようです。

発掘調査を行った時点では小屋はほとんど朽ち果て、周囲の石積みが残っているのみでしたが、内部からは小屋の入り口につけられていたとみられる取っ手や釘、材の一部などが見つかっています。また、石積みを外したところ、裏側には周囲の岩が風化などによって砕けたものがたくさん入っていました。そのため隙間が多くあり、空気の通り道となって氷室を涼しく保つのに役立っていたのでしょう。




氷室と風穴(ふうけつ)

「氷室」とは昔の冷蔵庫です。ここでは氷室が天然の風穴を利用してつくられているため、夏でも冷たい空気で満たされ、とてもひんやりとしています。

この氷室の発掘調査を行った際に、石積みにタバコの煙をかざしてみると、煙は石積みの隙間から氷室内部に向かってなびき、冷風が噴き出しているのをはっきりと確認することができました。

では、なぜ風穴では冷たい空気が出るのでしょうか?

それはどうやら地盤と関係があるようです。岩は温まりにくく冷めにくい性質をもつことから、気温の高いときに空気が岩に触れると空気が冷やされます。冷たくなった空気は重くて下に沈んでしまい、山の下の方の岩の隙間から吹き出してくるため、風穴ができると考えられています。
材木岩周辺の地盤は安山岩で構成されていることや、風化などによって破砕された岩が山の斜面に厚く堆積しているといった条件がそろっていたため空気が通り抜けやすく、風穴となったのでしょう。

冬には夏とは逆に、周囲が寒いときでも岩がわずかに空気を暖めるため、風穴内は「夏は涼しく冬は若干暖かく」といった環境が保たれるのです。

氷室はこのような自然現象に、地域の産業をうまく取り入れた蚕種の保存に利用した、先人のじつに賢い知恵だったといえます。 



公園内の石像

凝った石加工が各所に見られる


材木岩を模した噴水



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