2016年10月31日月曜日

お釜は2代目?[蔵王]



「蔵王のシンボル、お釜! いつ見てもキレイだねぇ!

「そうじゃな。すばらしい自然景観じゃ」



朝焼けの「お釜」



「お釜って、いつ頃できたのかなぁ?」

「ずばりとは言えないが、およそ800年ほど昔のようじゃ」

「そのころだと、1230年の『北条九代記(ほうじょう・くだいき)』の記録があるね。もしや…、あの噴火がお釜誕生かも!?」

「あるいはそうかもしれんな。ところで、『お釜は2代目』という話は知っとるかな?」

「え〜? どういうこと?」

「厳密に2代目と言い切れるわけではなく、3代目とか4代目かもしれないんじゃが、お釜の東にくぼんだ地形があるじゃろ? それがお釜火口ができる前の五色岳(ごしきだけ)の旧火口なんじゃ」



お釜の旧火口と現火口



「あ、なるほどね〜。お釜にちょっと重なって、別のお釜っぽい凹みがあるね! これがお釜のお姉さんなんだね!」

「兄か姉かはわからんが…。旧火口は、お釜火口の噴出物で埋まっておる。お釜の湖岸で堆積の様子が観察できるんじゃ」

「ほんとだ! しましまが凹みの形に曲がってるよ! まさに『しましまは蔵王火山の年輪』だね!」






「蔵王火山は、約120万年もの長い時間をかけて成長してきたんじゃ。これぞ壮大なる地球の営みじゃ」

「120万年? そんなに長い間、ずっと火山活動を続けてたの?」

「いや、活動期と休止期とを何度も繰り返してきたようじゃ。くわしくは下の年代表を見てくれ」

「よく『蔵王連峰は、北→南→中央の順にできた』ってお話を聞くけど、これを見ると必ずしもそうじゃないんだね〜」

「北と南から中央に寄せてきてる、という感じじゃな」



約120万年〜80万年前
瀧山火山(北蔵王)、ロバの耳岩(中央蔵王)、前山・杉ヶ峰(南蔵王)などの山体ができる。ロバの耳岩は水中で固まった溶岩。つまり、当時はカルデラ湖ができていたことがわかる。

約80万〜40万年前
活動休止期

約30万〜10万年前
五郎岳・三郎岳付近(北蔵王)、中丸山付近(中央蔵王)、馬ノ神岳・不忘岳(南蔵王)などの山体ができる。

約10万〜3万年前
活動休止期

約3万年前
馬ノ背カルデラができる(中央蔵王)。複数の火口からの噴火や、爆発的な噴火が発生。比較的狭い範囲に複数の火口が形成され、後にこれらの火口が連結してカルデラが形成された。

約3万〜1万3,000年前
馬ノ背カルデラ内で爆発的な噴火が断続的におこる(中央蔵王)。約2万8千年前にはごしき岳が形成されはじめる。これらの噴火の火山灰は遠刈田温泉付近から、ときにはさらに遠方にまで降り注いだ。

約1万3,000〜7,500年前
活動休止期

約7,500〜4,000年前
それ以前より規模は小さいが、依然としてやや大規模な噴火が断続的におこる(中央蔵王)。

約3,000年前
特殊な規模の水蒸気爆発が発生し、現在の五色岳付近に凹地が形成される(中央蔵王)。

約2,000年前
凹地の東部から噴火がはじまり、五色岳が成長をはじめる(中央蔵王)。マグマ水蒸気爆発を繰り返し、火砕サージも多発した。

約2,000〜1,500年前
五色岳、標高1,500mほどまで成長。また、火口がやや西方に移動する(中央蔵王)。西方に移動した旧火口は、お釜火口に隣接しており、現在も痕跡が観察できる。

約800年前
五色岳、火口が現在のお釜の位置に移動する(中央蔵王)。

約800年前〜現在
五色岳、火山活動を断続的に繰り返して現在に至る(中央蔵王)。



出典:蔵王山頂レストランの資料